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弱肉強食

 投稿者:バッカス  投稿日:2008年11月23日(日)22時07分6秒 p1149-ipbf1608funabasi.chiba.ocn.ne.jp
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1998年01月23日(金)
メジャーデビューまであと1週間。和田マネージャーが「きょうは見学に行くから」と言う。
彩っぺが「見学ってどこへですか?」と聞き返す。

「ミュージックステーション」
「えっ? あのタモリさんのですか?」みんなの驚く声が重なった。

夕方、スタジオに行く。和田さんがスタジオ中のスタッフに私たちを紹介して回る。
私たち5人は声を合わせて挨拶する。「よろしくお願いします」
まだデビューしてないけど、CDも発売になってないけど、もう何回このことばを言って
きただろう。

「おはようございます」「よろしくお願いします」
芸能界ってこの2つのことばから始まるんだな、ってつくづく実感した。

やがて出演するアーティストが集まってリハーサルが始まった。
「すごいよ!生だよ、生」なっちやカオリがはしゃいでいる。

私は和田さんに聞いてみた。「あとでサインをもらってもいいでしょうか?」
和田さんが小声で叱責する「バカヤロー!ここはみんな仕事で来てるんだ。

そんなところでサインくれなんて言ったらいい恥さらしだ。
それよりもお前たちがサイン欲しいなー、と言われる立場にならなければダメだろ」

ランスルーも終わって本番が始まる。
さきほどリハーサルをしていたアーティストたちがステージの中央に出て歌いはじめる。

「ぜんぜん違う!リハーサルなんかよりずーとかっこいい!」
私はスターといわれる人たちのライブの魅力にひきつけられた。それとともに不安になった。
(私たち来週あそこに立つんだ。あんなすごい人たちと一緒のステージに立つんだ。
大丈夫だろうか?)


1998年01月25日(日)
「HEY!HEY!HEY!」のビデオ収録。ステージの中央に立たされた私たちをダウンタウンの
2人が囲む。

「さぁー問題はコイツらです」浜ちゃんのトークが始まった。
私たちは浜ちゃんと松ちゃんの問いに「はい」と答える。

松ちゃんが明日香に向かって「おまえアレだな、銀杏みたいやな」と容貌について話す。
明日香がビクッとする。浜ちゃんが「こいつ泣きそうやでー」と話しを続ける。

目をうるませた明日香が「とつぜん大きな男の人2人に囲まれたらコワイです」って
答えている。
私たちは、そんなやりとりを聞きながら下を向いて笑っていた。

メジャーデビュー曲をうたって歌手になれたんだって、弾む気持ちで楽屋に戻った。
戻るなり、和田さんにすごい顔で怒られた。「お前たち、なに勘違いしているんだ?

せっかくダウンタウンの2人が話しをふってくれているのに『はい』と『いいえ』しか言えて
なかっただろう?
あんなトークで話しが続くと思っているのか?

もし松ちゃんが福田に話しをふってくれなかったらと思うとオレはぞっとするよ。
番組でトークの時間をもらえるってことはラッキーなんだ。せいいっぱい有効に使うんだ。
いいな、わかったな?」

和田さんが怒っていた理由はよくわかった気がした。
私たちは今まであこがれていたアーティストと一緒のステージに立てて嬉しいと思っていた。
ラッキーだと思っていた。しかし違っていた。

ラッキーなのは、新人歌手の私たちがトークの時間をもらえたということで、その分時間を
削られた人がいる。
歌だけで返された人がいる。私たちのトークの時間がなくなれば喜ぶ人が別にいる。

先週の「ミュージックステーション」の見学のとき、和田さんに「ここは仕事場だ」と
いわれた理由もわかった。
私たちはテレビに出られて、デビュー曲を歌えて喜んでいたけど、一緒のステージに立つ人は
すべてライバル。

私たちのテレビに映る時間が少なくなれば、その分増えると悦んでいる人たちだったんだ。
自分たちは、私たちが消えてしまえばいいと思っている人たちに「サインください」って
甘えようとしていたんだ。
芸能界ってホントはこわいところだったんだ・・・。
 
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